上司

会社勤めの頃、一から教えてくれた上司は、それはそれは頑固なおっかない親父で、バカヤローって何回言われたかわかんないぐらい、もうクソミソに言われた。

「お前がいなくても地球は回るし、会社も回るんだよ！自分だけが苦労したなんて思うなバカヤロー！、お前の代わりなんていくらでもいるんだよ。うぬぼれたら終わりなんだぞ。」

とか・・・

「部下や上司や人が思うように動かなかったら、自分が動け。動いたら愚痴一つも言うな。自分が動く時だって気がついた時なんだから、文句言わずに感謝しろ！お前は何様だバカヤロー！」

･･･と、バカヤロー、バカヤローって７年間も言われ続けて、奥さんがアルツハイマーになって、介護のためにお辞めになり、最後の出勤日にアタシが退職のプレゼントを用意していたのに、てめーはまだ仕事があるだろうがっ！って入社以来、無遅刻無欠勤の上司が初めて早退した。お疲れ様って誰にも言わせないで辞めてしまった。

私に一番厳しい人だったけど、実はいつも私を一番かばって、何かあれば「あいつにやらせてください」、「男の社員よりよっぽどあいつの方が仕事します」って、社長に何度も言っているのを知っていた。バイト生活が長いから頭を下げる事は平気だったけど、人をまとめるのがそれは胃が痛くなる思いで、その度に優しく突き放して、疲れ果ててるタイミングで休みに呼び出し、極上の鉄板ステーキを食え食えって言う人だった。

「部下に好かれようと思うから苦しむんだ。上司なんて嫌われてナンボの仕事。馬鹿言ってんじゃねー」って言っている上司を本当に尊敬してた。辞めてからも、私を呼び出して、動物のボラの事は大反対で、「仕事をしている時が一番いい顔してる」ってバカヤロー親父はまだ私にけしかけている。

内緒ではじめた中学生のアルバイトから会社を辞めるまで、本当に色んな人に怒られて叱られて頭を下げて謝って、そして教わった。

奥様が亡くなって５年目の夏。バカヤロー上司は田舎に引越しちゃったけど、そこでもきっと怒っているかな。長生きしてくださいよ、バカヤロー(笑）

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